近道などございません。
こんばんは、大晦日ぐらい畑仕事を休みにして寝れるだけ寝てやろうとしたら、20代前半の時は昼過ぎまででも寝れたのに、今朝は9時には目が覚めてしまい「もう若くはないなあ。」と年齢を感じているアラサー(32歳)のミカミです。
最近の畑の様子をご紹介。
収穫している野菜は、
ニンジン。
立派に太りました。
ダイコン。
これまた大物に。
小松菜。
気温が低かったため生長の遅かった第2陣がようやく採れる大きさになってきました。
カブ。
生長途中に早どりすると辛味が強いので要注意。
あとは菜花、春菊、ホウレンソウなど。
もうしばらくで収穫を迎えるのは、
奥の方に花蕾が見えます。
キャベツ。
ゆっくりですが結球が進んでいます。
収穫・出荷作業の傍ら、畑を広げるため隣接する耕作放棄みかん畑の開墾も少しずつ進行中。
やっと下草や手ごわい蔦の刈り取りに先が見えてきたので、年明けに木を切り根を抜く作業をしようと思っています。
開墾には手がかかりますが、長らく耕作放棄地だったおかげで土の状態はとても良好で、作付けが楽しみであります。
それから自家製堆肥づくりにも着手。
これは刈り草堆肥。
こっちはモミ殻堆肥。
刈り草は勝手に生えてきた雑草なのでもちろんタダ。
モミ殻も近くのライスセンターでもらってきたのでタダ。
発酵促進に混ぜてある米ヌカもコイン精米機から集めてきたのでタダ。
同じく鶏糞も車で少し行ったところにある養鶏場の方の厚意でタダ。
身の回りで手に入る有機物を上手に利用するのは有機農業の基本です。
課題は全圃場に入れる量を手際よくつくる方法と場所の確保。
これについては今後も試行錯誤が繰り広げられるでしょう。
今年を振り返れば研修修了、引っ越し、就農と慌ただしく過ぎ去っていきました。
就農、作付けを通してあらためてひしひしと感じることを何故か執事風に言うと、
「僭越ながら申し上げます。ロープウェーのない山と同様に、近道などございません。一般論で申しますと、異性へのアプローチと同様に、焦りは禁物でございます。」
これもしなくては、あれもしなくては、という事が山ほどありますが、結局のところその日できる作業を日々積み重ねることしかできません。
近くない将来のある日ふと振り返ってみると、
おお、結構登って来たな。
と思うのでしょう。
そんなこんなで今年も大晦日を迎えました。
思えば今年もたくさんの方々に大変お世話になりました。
本当に。
この場を借りて厚く御礼申し上げます。
よいお年をお迎えください。
わかりにくい理由。
こんばんは、根が生真面目なので時々は肩の力を抜いて息抜きをしなくては、と思っているけれどそう思っていること自体真面目から抜け出せていないよな~ミカミです。
本旨とは関係ありませんが、これは余った菜花を活けてみました。
今日は前回から続く真面目な話。
ある日、お世話になっている直売コーナー担当の方から、野菜の袋に貼付けてあるシールの、
「栽培期間中、農薬・化学肥料 不使用」
の文言をやめてほしい、との連絡がメールで入りました。
(その直売コーナー担当の方は、とある農業法人に所属)
(その農業法人が某大型スーパー内に直売コーナーの場所を借りている)
(僕はその直売コーナーに野菜を出荷している)
電話で詳細を聞けば、何でも某大型スーパーのバイヤーさんの意向とのこと。
理由は、お客様から
「有機野菜だと思って買ったのに違うのか。紛らわしい。」
というクレームを来なくするため。(現時点でクレームはきていない。)
表示に関しては前回のブログを参照ください。
これを読んでもらえればわかる通り、僕はきちんと法律にのっとった形で農薬も化学肥料も使用していないことを表示しています。
ただ、確かにわかりにくくはあるので、
・僕の方からそのバイヤーさんに説明。
・表示についてお客様への説明文を直売コーナーに掲示する。
といった対応を提案しましたが、どうやらそういうことではないそうです。
某大型スーパーのバイヤーさんからの、
「お客様からクレームが来る可能性のあるものは事情がどうあれ無くす。」
という有無を言わせない頭ごなしの指示(決定済)なのだそうです。
話を聞けば、その直売コーナー担当の方はこれまでにも某大型スーパーのバイヤーさんの一方的な指示と生産者の間で板挟みにされながら何とか折り合いをつけやってきたとのこと。
しかし僕たちも「はい、そうですか。」と簡単に引き下がるわけにはいきません。
あのシールは、作成に少なくない時間と労力がかかっています。
ロゴマーク、文言、フォント、色合い、行間、印刷業者、などなど何度も何度も試行錯誤し作り上げました。
それは研修から就農までの苦労をも象徴しています。
しっかりと調べ、ルールを守って表示しているのに、
話し合いもなく頭ごなしに「この表示はやめてください。」
とは生産者をないがしろにしています。
そのような背景もあり電話ではやや熱くなって話してしまいましたが、直売コーナー担当の方は間に入っているだけなので悪くないですし、いくら話しても解決するわけはなく、結局
「しばらく考えさせてください。」
と言って電話を切りました。
その日から翌日にかけて悩みました。
「直接そのバイヤーさんに直談判に行こうか。」
「でも間に入っている直売コーナー担当の方に迷惑がかかるかもしれない。」
「その某大型スーパーには出荷を停止しようか。」
「それだと安易すぎやしないか。衝突したらすぐやめる、ではなく、何とかうまくかわして売りぬくしたたかな姿勢が必要ではないのか。お世話になっている直売コーナー担当の方だって間に挟まれながら頑張っている。」
「しかし有機農業には生産者が軽んじられている構造への問題提起という役割もある。長いものに巻かれろ、ではいけない。」
このような自問自答の中、翌日の夕方1本の電話が。
出てみると直売コーナー担当の方が所属する農業法人から。
「~さん(直売コーナーの担当の方)が倒れました。」
「ええ!!」
(久々に大きな声を出して驚きました。)
過労と不摂生がたたり、僕と電話で話した数時間後に倒れ、現在入院中とのこと。
翌日お見舞いに行き、電話で熱くなってしまったことを詫び、忙しく働きすぎたのでしょうから、ゆっくり休んでお大事にされてください、といった話をしました。
そしてその方一人で全てをまわしていた(その労働形態にも大いに問題があると思う)某大型スーパーの直売コーナーは出荷停止となりました。
今後、別の担当者が現われ出荷が再開できる状況になったとしても、僕は葉っぱ1枚とて出荷する気はありません。
今回の件に限らず、社会にはわかりにくい構図がいくつでもあります。
では何故わかりにくくなっているのか。
わかりにくい事は切り捨てればいいのか。
その分断が社会にどのような影響をもたらすのか。
面倒でも切り捨てずに、そのわかりにくい理由ひとつひとつと向き合い続ける社会的かつ道義的責任がそれぞれにある、
と、一生産者として、一消費者として、一庶民として考えております。
(それは『つむぎ園』という農園名に込められた理念でもあります。)
追伸:上記のような理由により、『つむぎ園』の野菜は現在
・マックスバリュ琴海店
・マックスバリュ時津店
のみへ出荷しております。
有機?無農薬? ~表示のハナシ~
こんばんは、出荷を終えたら雨が降ってきたので、野菜を入れる袋にシールをペタペタ貼っていたミカミです。
今日はこのシールにある
『栽培期間中、農薬・化学肥料 不使用』
という“表示”についての話。
当農園では農薬と化学肥料を一切使用せずに野菜を生産しています。
それは“一般的に”言うと、有機農法により生産された有機野菜です。
(“一般的に”という表現は曖昧さを含んでいますが、あえて使用しています。)
しかし、販売する際に『有機野菜』と“表示”して売ることはできません。
なぜか。
有機JAS認証を取得していないからです。
以下、農林水産省のホームページからの引用です。
有機食品のJAS規格に適合した生産が行われていることを登録認定機関が検査し、その結果、認定された事業者のみが有機JASマークを貼ることができます。
この「有機JASマーク」がない農産物と農産物加工食品に、「有機」、「オーガニック」などの名称の表示や、これと紛らわしい表示を付すことは法律で禁止されています。
これは2001年に改正されたJAS法により定められています。
この法律ができた経緯を短く要約すると、
基準が曖昧なまま「有機」、「減農薬」などの表示が氾濫して消費者が混乱したから。
そしてこのJAS法が定めた有機農産物の生産方法の基準は、
・ 堆肥等による土作りを行い、播種・植付け前2年以上及び栽培中に(多年生作物の場合は収穫前3年以上)、原則として化学的肥料及び農薬は使用しないこと
・ 遺伝子組換え種苗は使用しないこと
となっております。
「有機」と表示するためには、これを証明するために、
生産行程に関する管理の記録
格付に関する管理の記録
JASマークに関する管理の記録
ほ場の一覧
種苗の一覧
資材(肥料、土壌改良資材、農薬など)の一覧
機械・器具の一覧
施設の一覧
などなどの書類を作成し、認定機関へ提出する必要があります。
それから有機JAS認証取得の費用について。
長崎では例えば長崎県食品衛生協会が承認機関となっており、その費用はこちら、
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/yuuki_tesuryo_16.pdf
抜粋します。
計算例1)有機農産物認定申請で実地検査が1日必要な場合
①+②×1日+④+⑤=251,200
はい、実地検査が1日の場合で25万円を超えてきます。
2日かかる場合や有機加工食品も申請する場合はさらに費用がドドンと跳ね上がります。
実地検査が1日の場合でもまだ終わりではありません。
上部にある「1.認定手数料の額」の横を見てください。
(交通費、出張経費は含まれていません。別途請求)
と書かれています。
はい、検査員の交通費と出張経費が25万1200円とは別途で請求されます。
単刀直入に申し上げてやってられません。
とまあこのとおり有機JAS認証制度とは、煩雑な書類作成とかなりの費用負担を有機農家に一律がっつり負担させる制度となっています。
その構図は本来の有機農業の理念と相反するものでもあります。
それゆえ、実質、有機JAS規格に該当する(もしくはそれ以上の)有機農産物の生産者でも、有機JAS認証を取得していない、ということが数多くあります。
偽物を規制しようとしたら、本物にまで背を向けられてしまった。
といった芳しくない結果を招いていると言えるでしょう。
ちなみに『無農薬』という表示も平成19年に改正された「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」によって禁止されています。
(「減農薬」「無化学肥料」「減化学肥料」の表示も禁止)
http://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/tokusai_qa.pdf
Q6を見てください。
この長文を可能な限り短く要約すると、
「無農薬」は“生産過程において”農薬を使用しない、
という意味の表示であったのに、
消費者からは“土壌に残留した農薬や飛散してきた農薬を含め”一切の残留農薬を含まない、
という意味に誤ってとらえられていた。
「無農薬」が「有機」という表示よりも優れていると誤認していた消費者が全体の6割以上もいた。
という理由から「無農薬」という表示が禁止されました。
まあ、全然周知されておらずはっきり言って野放し状態ですが。
こういった訳で、当農園の野菜には
「有機」でも「無農薬」でもなく、
Q6の6.に示されている内容を律儀に守り、
「栽培期間中 農薬・化学肥料 不使用」
という表示がされています。
「有機JAS認証制度」が導入されたのは消費者が混乱していたから。
「無農薬」という表示の禁止は消費者に誤解を与えていたから。
それらを解決するために国は上に記した2つの策を講じました。
しかし実際のところ、1つの混乱が別の形の混乱に姿を変えただけという結果になっています。
その姿を変えた混乱が、有機農家として新規就農した僕たちに象徴的にふりかかる事件が勃発したのですが、長くなりすぎたのでそれについてはまた次回。